クロスストーリー
「さて、どうしよう…。」

あまり悲観的に考えるのは好きではないが、さすがに目的が無いと不安になる。
その不安を誤魔化すためか、カミヤはあの部屋で言われたことを反芻していた。
『学園』『資格』そして…

「『特待生』…。」

古代インドに存在したカースト制度とでも言うのだろうか。
幸いにも欠落していたのは自分の名前や生活の一部のみだったため、それ以外の知識は人並みにあった。
人間は知識が多ければ多いほど思考回路は深くなりやすい。
簡単に言えば考え事をしやすくなるのである。

「…うーん、どう考えても俺には似合わない制度だよねそれ。」

肩に乗せたユナをウリウリと弄りながら探索を続ける。
本能的に理解していた、自分はこういう関係が好きなのだ。
上とか下とかをあまり考えることなく、ただあるがままを。
それは支配から最も離れた思想、『共生』の考えだった。

「仮に俺が自分から攻撃したり、屈服させようとか考える時っていつだろうな?」

気持ちよさそうに目を細めるユナを見ながら、カミヤはぼんやり呟いた。
その時、微かに音が聞こえる…生活音?
風が木々の間を通り抜ける音以外、何一つ聞こえないことが幸いした。
自然の音しか聞こえない中で、人間が出す音はよく目立つ。
耳を傾けているうちに自ずと進行方向は決まっていった。

< 21 / 63 >

この作品をシェア

pagetop