クロスストーリー
「学園の場所知っているといいねー。」
「キュー。」
淡い期待をかけつつ、音のする方向への足取りは加速する。
とりあえず話してみればなんとかなるだろう。
だが歩みを進めているうちに違和感を覚えた、妙な音が混ざっている。
「…なんだ?金属音の他に…足跡か?」
その音は平穏や団欒が生み出す音ではなかった。
もっと別の…駆け足でまるで…。
「……ユナ、つかまってて。」
その予感が外れであることを願いつつ、カミヤは急に走り出す。
あの人が言った『凄い体』は、まるでネコ科の猛獣のようにトップスピードへと加速する。
舗装されていない参道は凸凹や木々の根にまみれ、慣れない者なら足を取られそうなものだがカミヤは速度を落とさない。
どこの地面が固いのか、最短で進める道を意識せずとも体が選択しているのだ。
「どこだ…!?音のする場所は!?」
ダン、ダン、ダン。
歩数を極限まで減らした、独特の地面を蹴る音が静寂を軋ませる。
距離が縮まるにつれ、予感は確信に変わった。
そして、覚悟を決めると同時に悟った。
「あぁ…こういう時か。」
トップギアのままナイフに手をかけると、加速した全体重をもって、ためらわずそれに突き刺した。