クロスストーリー
「フゥ…痛。」

安心した途端に痛みが戻ってきた。
幸いそれほど深くはないみたいだけど、皮膚の浅いところだったせいか血がなかなか止まらない。

「参ったな…何か拭くものは…」

「…あの!!」

「ん?」

元々救出目的だったことをすっかり忘れていた。
…というか、顔もまだ見ていなかった。
思い出して、ようやく顔を向けることが出来た。

「っこれ、使ってください!」

血を見ることに慣れてないらしい。
恐る恐る手渡されたそれはチーフほどの大きさをした布。

「あぁ、ありがとう」

素直にお礼を言って布を傷口に当てる、彼女は自分よりやや幼い印象を受けた。
自分より明るい、栗色の髪、それと同じ色の目からはまだ怯えが消えない、というよりもむしろ…
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