クロスストーリー
まぁ龍が出てきた時点であきらめていたのだけれど。
人型までいたのは予想外だった。
まるでおとぎ話の中に存在していたような、動物の耳をした少女。
ピクピク動いているので本物なのだろう。

「えーっと…それで俺にどうしろと?」

「…叩きませんか?」

「?、なんで?」

「私の姿を見て…馬鹿にしたりしませんか?」

「???意味がよく分からないんだけど?」

まったく質問が理解できなかったので、そのまま答えてしまった。
人間とは別の種族だった、それ自体にはとても驚いたのだが彼女の不安げな表情を見ているとすぐに毒気を抜かれてしまう。
と、いうより何故こんなにも怖がられているのかがよく分からない。
血とか、暴れたからとかではなく『人間そのもの』に怯えているような…

「えーっと…別に馬鹿にしたりしないよ?」

自分に出来た精一杯の返事だった。
だが彼女にとっては効果覿面だったらしい。
パアアと顔を明るくさせると、安心したように微笑んだ。
そして自分が住んでいる家に案内してくれると言う。

「こっちです!」

「ちょっと待って俺一応怪我人…。」

苦笑いを浮かべながら彼女の後をついていく。
いつの間にか歩いている場所は道になっていた。
ある程度の舗装がされているのか、固い土の道は体への負担が少ない。
痛みはまだ残っているがこれ以上彼女を不安がらせるにはいかないので、かろうじてカミヤは彼女のペースに合わせていた。

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