ｸﾛｽｽﾄｰﾘｰ
「…ここが！私の家になります。」

「あぁ…可愛い家だな。」

背中は流れる汗でもう感覚がなくなってきている。
どうにかまだ足元はふらついてない。
古い木製のドアを開けると目に入ってきたのはダイニングキッチン。
どうやらここは靴を脱がない家らしい。
何かを作っている匂いがするが、今はそんな余裕はない。

「おかえりリリィ、あら？」

どうやら彼女はリリィと言うようだ。
奥の方から笑顔で迎えてくれた女性だが、その表情はすぐに戸惑いへと変わった。
…まぁ当然か。妹？が見慣れない男を連れて帰ってきていたら。
どうやらここは二人暮らしの家らしい。
簡単に説明を終わらせたカミヤにとって何よりも幸運だったのは、彼女がリリィをすぐに奥へと促したことだった。

「助…かります、そろそろ限界だったので。」

「直ぐに座ってください、獣傷は治療が遅れると命に関わるんですよ？」

声を荒げるわけではないものの、彼女の表情は険しいものだった。
具体的な説明をされたことでだんだん実感してきたのだろう、カミヤの呼吸も荒くなっていく。

「まず傷口を洗って…あら？」

服を脱がして傷を洗い流したとき、一瞬だが彼女の動きが止まった。
…おかしい、もうすでに皮膜が再生しかかっているのだ。
雑菌の塊のような牙で抉られれば膿んでいてもおかしくはないのだが…。
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