クロスストーリー

「後で持ってきてやるよ、それと、学園内では俺にあんまり話しかけんなよ?」

「?」

最後の忠告がよく理解できなかったが、眼下に学園の建物が見えてきたことでこの時の会話は終わった。


「よっと。」

慣れた足取りで、荷籠のついた龍から飛び降りる。
直線的な形状でまとまった建物はこれまで見た中で一番近代的で美しい。

「ここは…病院か?」

「そ、で、俺はここの勤務医。」

…正直見えない。
が、黙っておこう。
勝手知ったる院内では看護婦たちが代わる代わるに挨拶をしていく。
治療はどうやらルゥが直接してくれるらしい。
院内の地理が分からないので後ろを付いていくのだが…

「…?」

なんだ…?なにかおかしい。
周りの人は皆笑顔で接してくるというのにこの違和感。
自分の周りだけまるで異物のような、この不快感は…

(…あぁ、そうか)

ここにいる人は笑顔でいるものの、殆どが演技のものなのだ。
まるで『笑顔』と描かれた仮面をつけて歩いているような、機械的で感情の無いもの
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