クロスストーリー
『笑顔で挨拶』ではなく『笑顔を着けて挨拶』では気持ち悪いのは当然だろう。
診察室へ着くと、ルゥはすぐに看護婦へ指示を出し、幾つかの薬品を持って来させた。
「ジッとしてろよ。」
包帯を剥がすと傷口に消毒用の薬品を塗る。
それを直ぐにふき取ると次に赤と緑、二つの液体が入った薬瓶の蓋を開けた。
-パチン。
目の前に並べた薬品に軽く指を弾く。
途端瓶の口から液体がせり上がってきたのだ。
「おぉ…。」
幻想的ともいえるその光景にカミヤは思わず声を漏らす。
シャボン玉のように小さい球状になって浮かんだ液体は一つに混ざり、黄色の水球になった。
それがゆっくりとカミヤの傷口に向かい、当たったと同時に貼りつく。
「…これが…魔法?」
「そ、それ珍しいからって今日は剥がすなよ?」
手で触ってみるとプニプニとしていて丁度餅を触っている感触に似ている。
新しい包帯に巻かれ、治療にかかった時間は10分にも満たないだろう。
感心して傷口を抑えると痛みはほとんど無くなっていた。
「…あれ?これ治療費とかどうなるんだ?」
「特待生は基本的に料金かかんねえよ、あぁ苛立たしい。」