クロスストーリー
「…」

ゴロン、と寝返りをうつ。
まともに装飾が施されているのはとりあえずの意味で用意されている寝室のみ。
しかも間取りを確かめたところここはおそらく同居人か使用人の部屋らしい。

「…権利か」

学園長の言う強いものほどあらゆる権利を得られるというのには理解できる。
それは自然淘汰というものだろう。
だがそれを堂々と規律にしてしまうというならやはり納得いかない。

「…アイツもその権利っての使ってるのかな…。」

仕事があると、部屋の入り口で別れた“彼”を思いだした。
自分よりも幼く、小さい…学生でありながら医者という立場にいる以上それ相応の能力を有しているのだろう。
そういう人物が飛び級で職につけるのはある意味理想的だ、だが…

「…随分…寂しそうにしてたな…。」

別れた時、後姿がどうにも見た目以上に小さく見えた。



…バカバカしい、憶測で何を考えているんだ俺は。

「キュ?」

「どしたユナ?腹でも減ったか?」

…そういえば俺も怪我してから食事を取ってなかったな。
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