クロスストーリー
噂っていうのは不思議なもんで、悪いものほど早く回る。
混乱と絶望と不安に包まれた中、規模が小さい事もあり翌日の昼にはもうすでに村中に広まっていた。
PM14:00
村の長が家に来る。
羽を見るなり俺を殴りつけ、踏みつぶされ、怒鳴り散らされながら頬を叩いた。
どれだけ謝っても、悲鳴を上げても泣き叫んでもそれを止める人は誰もいない。
両親さえも顔を伏してただ謝っている。
気絶していたのか、体中に包帯を巻かれた俺が眼を醒ましたのは、家の外だった。
父親は俺に最低限の荷物が入った袋を渡し、拳を震わせながらたった一言
「出ていけ。」
それだけ伝えると父親は家へ帰り戸の鍵を閉めた。
泣きながら開けてとドアを叩く自分、答えない声
うずくまる俺に投げつけられたのは、石。
隣の家の、いつも挨拶していたおばさんが、遊んでくれた近所のお兄ちゃんが、読み書きを教えてくれた先生が、今まで見た事が無いくらい冷たい眼で俺に罵声と石を浴びせる。
『出ていけ!』
『汚らわしい!!』
『近寄るな!!』
両親から最後に貰った荷物を抱えて、裸足のまま溢れ続ける涙と一緒に必死で走って。逃げ続けて、
声も石も届かなくなって気がついた場所は村から離れた森の中。
帰る事は…もう出来ない。
意識が現実に戻る中、聞こえてきたのは人の足音と悲鳴、歓喜、競りの声
…ここは何処だ?
眼を開けて待っていたのは青空と鎖に繋がれた人間達。
獣人、人間、亜人…様々な人種が首輪をかけられ俯いている。
ここは…奴隷市場か。
布の扉を開けると太った男が付き人を何人も従えてやってきた。
『今日はこいつらか…さっさと始めろ』
そう言うと付き人たちは一斉に奴隷たちの体を調べ始める。
体つきはどうか、どの部門の奴隷にするか、グレードはどうするのか。
聞いてるだけではわからないが少なくともここにいる俺らは“値踏み”されているんだろう。
リーダー格の男が俺の前に立つと太った指を顎に当てながら気味の悪い笑みを浮かべる。
「光栄に思え、お前は俺が調べてやる。」
男は俺の被っていた布を強引に剥ぎ取ろうとする。
怖いのと背中を見られたくないので必死に抵抗するも、弱り切った体では勝てるはずもなくむしろ男を喜ばされるだけだった。