クロスストーリー
土埃のついた襤褸切れを無理やり奪うとそれまで楽しげだった男の表情が一気に不機嫌へと変わる。

「お前…堕天種かよ。」

何も身につけていないガリガリの体を地面に叩きつけられ、蹲ったところに男は唾を吐き捨て手下の1人を呼んだ。

「こいつはダメだ、上客どころか堕天なんざ売りもんになるかどうかも怪しいからな
お前引っ張ってまとめ売りのワゴンに持っていけ。」

「嫌ですよ、触ったら呪われそうじゃないですかい。」

「馬鹿野郎!!俺ぁさっき素手で触っちまったんだよ、これから洗い流してくるから後は頼んだぞ。」

奴隷商人の男はそのまま帰り、手下の男はなるべく俺を触りたくないのかゆっくり近づいた。

「やれやれ…今日はついてねえや、さっさと錠かけて引っ張ってっちまおう。」

片足に金属製の足輪を掛けられ、抵抗すると言えば爪を立てられるくらいで、そのまま引きずられていく俺を見た多くの人は憐れむでもなく、笑うのでもなく、ただ汚物を見るような眼で冷たく見下ろすだけだった。











俺には奴隷としての価値も無いのか。
< 52 / 63 >

この作品をシェア

pagetop