クロスストーリー
「おらよ!」

力任せに投げられ、痛みと疲れで起き上がれない俺に男は

「ここはな、奴隷の中でも最下位の処理用奴隷のジャンク品売り場だ。
上手くいけば一体あたりパンを買うより安い値段で買い取られ三日以内で売れ残りゃ処分される使用価値の無くなったゴミ共の最後に行き着く場所さ。
ま…買い取られても実験材料ぐらいにしかならんから一緒かもな。」

鼻を摘まみながらそう言う男はそのまま帰ってしまった。
放りだされた場所は店と言うよりも牢屋に近く、酷い死臭がする。
店員もおらず、代わりにお金を入れる箱が置かれているだけだった。
俺以外の奴隷も手足の無い者、眼の見えない者、満足な治療をされている者は全くおらず、大火傷を顔に負った獣人の少年?は顔がただれウジが湧いているのか常に悶え苦しんでいた。





朝、用務員らしき老人がホースを持ってやって来た。
何をするのかと思ったら勢いよく水を掛けられ部屋は水浸しに、用務員から見た俺らは汚れと対して変わらないらしい。
それに文句を言う人もいなかった。
もうすぐ死ぬのが解っているのに火種を持ちこむなんて馬鹿げてる。


二日目。

白衣を着た、どこかの研究員の男たちがここにやってきた。
途端、周りにいた奴隷達の眼の色が変わる。
少しでも自分に興味が湧くように、地べたに這いつくばって服従のポーズをとる男、体が丈夫な事をアピールする為必死にジャンプしたりする女、ここで売れ残ってしまえば明日には処分が始まる。
そうすれば自分の命なんて簡単に無くなる事を皆悟っていた。

俺は…動けない。
10日近く何も食べていない体は動きたくても動けず、背中に生えている罪人の証は人を拒絶する。
ここに行きつくまで代わる代わる嬲り者にされ、体力も無く、飢えでガリガリに痩せ細った体の異端者など誰が欲しがると言うのか。

案の定白衣の男たちは俺に眼もくれる事なく、アピールをしていた数人を買い取り出て行った。

残された人たちの眼にあったほんの少しの光は…もう無い。

三日目。

手下の男が言っていた処分が始まる。
処分と言っても簡単なものだ、鉄格子の前に車が止まり、そこに奴隷が乗せられ、後はゴミ捨て場に投げ飛ばされる。
たったそれだけ、そして海抜の低いゴミ捨て場に落とされれば殆どが即死だし万一生きていても誰も近づかないからそのまま野たれ死ぬ。
それだけだった…俺の命もそこで無くなるんだと思っていた。
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