涙のち晴れ
「ねぇ、何歌う?」
「ハナビは?」
「まだ夏じゃないよー!ま、いっか!」
二人に共通するのは、歌うことが大好きだということ。
よくカラオケにも行くし、こうやって誰もいない所で歌うのも珍しくはない。
『-見上げた夜空~ふたり一緒と約束した・・・』
歌いながら藍は思っていた。
啓二の夢は、有名なアーティストになること。
幼稚園の頃からずっとそう言ってきた。
歳を重ねるごとに、その想いは強くなっている。
かといって自分は夢があるわけではない。
だから啓二をうらやましく思ったこともある。
「やっぱ誰もいないところでおもいっきり歌えんの、気持ちいーなー!」
「めっちゃスカッとするー♪」
「・・・またこうできたらいいな」
「ん?」
風の音と啓二の声が重なり
藍には発した言葉が聞こえなかった。
「そろそろメシ行こう!」
「はーい!」