臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「い、いきなり何を言い出すんだよ! ……そんな事ある訳ないだろ」

 慌てて康平は言い返すが、心当たりは無い事もなかった。ただ、綾香本人が亜樹との関係を応援すると言っている以上、康平に確証は無い。

「俺の思い違いかも知んねぇからな。……たださぁ」

「ただ?」

「綾香ってさ、周りに気を遣うタイプじゃん。彼女、俺には他の奴らみたいに気を遣って話すんだけど、お前には自然体で話すように見えたんだよ。……俺にはな」

「……それは気のせいだと思うぜ」

「まぁ、俺が勝手に考えているだけで、お前を責めてる訳じゃねえからさ。今俺が言った事は気にすんなよ」

 健太はそう言ってフッと笑った。


 別れ際、健太が再び口を開く。

「俺さぁ、綾香は好きだけど、今はボクシングに集中しようと思ってんだ。自分が頑張っただけ強くなれそうな気がすんだよ。じゃあな」

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