臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 康平はこの質問を月曜日にするつもりだった。だが、その日は質問する余裕が無かった。

 その後三日間、康平は訊くのをすっかり忘れていた。その事を思い出したのだ彼は、訊かないまま弥生と会った時の事を想像して悪寒が走っていた。


「女の子って言うとマネージャー志望か? 前にも言ったが、うちじゃマネージャーはとらないぞ」

「マネージャー志望ではないです」

「ん、マネージャーじゃないとすると選手志望か?」

「選手志望は訊いてないですが、彼女は今まで実戦空手をやっていて、高校ではボクシングを習いたいらしいです」


 飯島は顎に手を当てて考えていた。

「純粋にボクシングをするって事なんだな?」

「えぇ、……純粋に顔面パンチを習いたいようです」


 飯島が苦笑した。

「おいおい、随分野蛮な子だなぁ。……高田と片桐は同じ中学だったよな。片桐も知ってる子か?」

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