臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 練習が終わり、近くの図書館へ向かう康平に健太が言った。

「康平、これから図書館へ行くのか?」

「まぁな」

「今日は俺も行くよ。そろそろテスト勉強しないとな。……それに、家の近くの図書館だと弥生がいるかも知れねぇからさ」


 前日、弥生の話題が出た後、健太は康平から家の近くの図書館で彼女と会った事を聞いていた。

「お前、昔っから弥生を避けてたもんな」

「あの暴力女は苦手なんだよ。……そういう康平だって、中学ん時は全然喋んなかったじゃん」

「あれは向こうから喋んなくなったんだよ。この前会った時、暴力は相変わらずだったけど、話すと人懐っこい感じだったぜ。性格自体は昔のまんまだよ」

「康平はお人好しだからな。……何にしても、俺は彼女にすんならああいう凶暴女は絶対にパスだよ」


 康平は苦笑した。

「まぁそう言うなって。来年は一緒の部活になるかもしんねぇんだからさ」

「そ、そうだな。……けどあいつの前世は絶対戦闘民族だぜ」


 康平が吹き出した時、二人は図書館へ着いていた。

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