臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「イタタタ」康平は左太ももを擦った。
「もう康平ちゃんはオーバーだね。……ところで誰かを探してたみたいだけど、山口さんかな?」
「ま、まぁな。……ぐ、偶然会う時は一緒に勉強するからさ」
「ふーん。彼女はついさっき、家へご飯食べに行ったよ。……私もハラ減ったからロビーで食べようかな。康平ちゃんはメシ食ったの?」
(女の子はふつうメシって言わないだろ?)と思いつつ康平は答える。
「俺は弁当持って来たけど食べるのはこれからさ」
「私はコンビニおにぎりが二つあるから一緒に食べようよ」
二人はロビーへと歩いていった。
椅子に向かい合って座り、昼食を食べ始めた康平と弥生だったが、二つのおにぎりしかない弥生はすぐに食べ終わった。
弥生は膝を組み、頬杖をしながら康平の食べる様子をジッと見ていた。
「お前、それで足りるのか?」
気になった康平が訊いた。