臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

「ま、待て弥生」

「待てって言われても、食った唐揚げは戻らないよ」

「違うって……む、胸が当たるんだよ」


 弥生は再びニヤリとする。

「ハハーン。私を女として見ちゃったんだね。私は空手で男と組手してるから慣れてんだけどさ。胸の感触を味わった代金として、もう一個貰うよ」

 康平の頭を左脇に抱えたまま、弥生は右手で最後の一個も口にした。


「色気付くのはまだ早いのよ」

 弥生はそう言いながら、康平の頭に右拳をグリグリと押し付ける。


「二人共何やってんの?」

 康平と弥生が声のする方を見た時、そこには亜樹が立っていた。


「康平ちゃんが私をイヤらしい目で見るから、ちょっとお仕置きしてたんですよ」

「そ、それはお前が原因だろ!」

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