臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 トイレへと向かう弥生を尻目に、亜樹が椅子に座った。

「や、弥生の言ってる事はデタラメだからな」

「ふーん。……でも少しは事実もあったんでしょ?」

「そ、それはそうだけど。俺は何にもしてな……!」

 話している途中、康平は亜樹のイタズラっぽい表情に気付いた。


「康平センパイは羨ましいわね。後輩に可愛がられてさ」

「な、何言ってんだよ。……でも亜樹は戻るの早くないか? 弥生はさっき出たって言ってたけど」

「急いで食べてきたのよ。机に道具だけ置いてずっといないんじゃマナー違反だしね。……それに」

「それに?」

「誰かさんが来るかも知れないしね」

「わ、ワリィな」


 亜樹は再びイタズラっぽい表情になった。

「あら、私は綾香の事言ってんのよ」

< 115 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop