臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

 その時、亜樹の持っている携帯電話がブルブル震える。彼女は図書館の中なのでマナーモードにしていた。

「綾香からだわ。ちょっと待ってて」

 携帯電話を見た亜樹は入り口の方へ歩いていく。



「綾香、今日は来れないって」

 ロビーへ戻って亜樹が康平に伝えた。

「そうなんだ。……でも携帯があると便利だよな」

「でしょう。だから今回のテスト頑張ってよ。携帯買って貰えるか懸かっているんでしょ?」

「わ、分かってるさ。……でも弥生の奴遅いなぁ」

「女の子がトイレに行った時は、そんな事言わないの! ……デリカシーが無いわね康平ちゃんは」

「……アイツの言い方真似んなよ。ハズいからさぁ」

 苦笑する康平を見て、亜樹はクスリと笑った。

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