臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「ちょっと大きい方も出て遅くなっちゃった」

「…………」

 戻った弥生がそう言った時、康平と亜樹は沈黙した。


「デリカシーが無いのは俺だけじゃないぜ」

 亜樹を見て康平が言った。


「うるさいわね! ……でも丁度よかったんじゃない? 康平ちゃんは彼女へ弁解する時間も出来たしさ」

「な、何勘違いしてんだよ!」

「そうよ。私と康平はただの友達なんだからね!」


 二人を見た弥生は、再び意地悪顔になった。

「二人共紅くなっちゃって可愛いね。……でも声が大きいんじゃないかなぁ」


 弥生につられて机の方を見た康平と亜樹は、数人の視線を浴びて少し小さくなった。


「や、弥生ちゃん、そろそろ勉強再開しよっか? 康平はまだお弁当残ってるようだし、私達は戻りましょ。……いい康平、静かに食べるのよ!」

「一人でうるさく食べたら、ただのアホじゃないか?」

 康平は突っ込んだが、二人は無視して勉強机に歩いていった。

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