臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
綾香は嫌味に聞こえたかと思ったのか、慌てながら言った。
「ご、ごめんね弥生ちゃん。悪気があって言った訳じゃないからね」
「分かってますよ。綾香さん優しそうですもん」
今度は康平がカラカイ気味に話す。
「そう言えば昨日、数学の先生んちは出入り禁止になったって言ってたよな? 弥生は一体何やらかしたんだよ」
「実はさ、数学のセンセ新婚でさぁ……」
弥生はクスクス笑って話が途切れた。
「気持ち悪い奴だなぁ。自分で話して笑っちゃってるよ」
「康平ちゃん、続き知りたい?」
「ま、まぁな」
「奥さんの前で、ふざけてコレをやっちゃったのよ」
弥生は、康平の頭を左の脇の下に抱えた。