臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「綾香さん、気分を悪くさせてごめんなさい」

 弥生は綾香が不機嫌になったと思い、深々と頭を下げる。


「え、全然怒ってないから大丈夫よ」

 ハッと我に返ったような顔をした綾香は、普段の人懐っこい笑顔になった。



 その後、一時間程勉強した四人は、昼食の為に一旦別れる事になった。

 亜樹が席を立とうとした時、彼女の小物入れの中にある携帯電話が振動した。


「お母さんからだわ。何かしら?」

 携帯電話を持った亜樹は入り口の方へ歩いていく。


 話し終わった彼女は三人に言った。

「ゴッメーン。私、帰らなきゃいけなくなっちゃった」

「どうしたの?」綾香が訊いた。

「うちのお母さん、今知り合いの結婚式へ行ってるんだけど、御祝儀を家に忘れたんだって。お父さんは用事で出掛けてるし、私が持っていく羽目になっちゃったのよね」

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