臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「どうだ! 違いが分かるか?」

「……肩関節を前に出すと力が逃げないって事ですか」

「お、いいぞ白鳥! 俺がお前らの拳を押した時、肩関節を前に出した状態だと、お前らは体全体を押されてバランス崩したろ?」

「はい」

「という事はだ、拳に加えた力が体に伝わってるって事さ。逆に言えば、体全体で生み出したパワーが効率よく拳に伝わるんだよ」

「じゃあ胸を反ると駄目だって事ですよね」健太が確認する。

「そうだな。胸を反ると特に肩甲骨が動き易くなるんだよ」

「ケンコウ骨……病気に関係する骨ですか?」

「……有馬、ちょっとオイシイぞ。肩甲骨ってのは、両肩の後ろにある大きな骨だよ」


 飯島は、考える様子だったが再び話し出す。

「分かり易く教えたいから誰か必要だなぁ。……高田、Tシャツを脱いで俺の前に来い」

「え、みんなの前で脱ぐんですか?」

 康平は、自分だけが服を脱ぐ事に躊躇した。

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