臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「スカートの中は事故だったんだからな」
「スカート? ……弥生ちゃんの話ね。あれは彼女からカラカワれてたんでしょ?」
「そうだよ。奴は誤解させるような事しか言わないんだよな」
康平がシカメッ面で話すと、綾香はクスリと笑った。
綾香が怒っている様子でもないので、康平は内心ホッとしていた。
「……もしかして、私がずっと黙ってたから怒ってると思っちゃったのかな?」
ハーフのような顔立ちの綾香が、覗き込むように言った時、康平はドキッとした。
「……ま、まぁな」
「誤解させてゴメンね。ちょっと考え事してたんだ」
「考え事?」
「……康平の良さを分かってくれる人がココにもいるんだなってね」
「弥生が? そんなわけ無いって」
康平は右手を小さく振って否定した。