臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「弥生ちゃんは康平にナツいていると思うんだけどな」
「いや、アレは誰にでもそうだと思うぜ。……ところで俺のいいところって?」
康平に訊かれて綾香はしばし沈黙した。
「……あえて言わないでおくよ。自分で意識すると不自然になっちゃうからね」
「……何となく分かるよ。それはそうと、弥生のお陰でテスト勉強は進まなかったよな」
「弥生ちゃんは入試がかかっているからね。でも気を遣って途中で帰ったんじゃないかな?」
「それは考え過ぎだって」
「そうかなぁ? でも弥生ちゃんは、一生懸命だから応援したくなっちゃうよ。……勉強はね」
不思議そうな顔をする康平に、綾香は話を続ける。
「私、前にも言ったけど、亜樹と康平の仲は応援してんだよね」
「亜樹とは友達と言うか、何て言うか……」
しどろもどろになる康平を見て、綾香は小さく笑った。