臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

「弥生ちゃんは康平にナツいていると思うんだけどな」

「いや、アレは誰にでもそうだと思うぜ。……ところで俺のいいところって?」

 康平に訊かれて綾香はしばし沈黙した。

「……あえて言わないでおくよ。自分で意識すると不自然になっちゃうからね」

「……何となく分かるよ。それはそうと、弥生のお陰でテスト勉強は進まなかったよな」

「弥生ちゃんは入試がかかっているからね。でも気を遣って途中で帰ったんじゃないかな?」

「それは考え過ぎだって」

「そうかなぁ? でも弥生ちゃんは、一生懸命だから応援したくなっちゃうよ。……勉強はね」


 不思議そうな顔をする康平に、綾香は話を続ける。

「私、前にも言ったけど、亜樹と康平の仲は応援してんだよね」

「亜樹とは友達と言うか、何て言うか……」

 しどろもどろになる康平を見て、綾香は小さく笑った。

< 144 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop