臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 バァン!

 狭い練習場にグローブ同士のぶつかる音が響く。

 アマチュア用のボクシンググローブはプロ用と違い、重さは同じでも柔らかくて大きい。その為、グローブ同士がぶつかると派手な音が出易い。

 スパーリングは実戦練習だが、安全を考慮して、試合用よりも重いグローブを使用している。

 減量なしでバンタム級(五十六キロ以下)の大崎とフライ級(五十二キロ以下)の有馬は軽量級なので、試合用より二オンス重い十二オンスのグローブを使う。ちなみに康平や健太、そして森谷は十四オンスと更に重いグローブでスパーリングをする。


 パンチの威力に対して大きな音の出易いアマチュアグローブだが、有馬の左ジャブは音に比例した威力があったようである。

 今までと違い、大崎は膝で小さくリズムを取り始めた。大崎の体が一定の早いリズムで上下にぶれる。

 そしてフットワークを使い出す。有馬の左ジャブを警戒している様子だ。

< 147 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop