臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「有馬は、私がいない時も打ち終わりにパンチを貰ってたんですか?」

 梅田は先週の後半、国体で県の副監督として同行していた為、部活には出ていなかった。


「そうですね。よく貰ってました。……勘が悪いわけではないんですがね」


 飯島が答えると梅田は頷いた。最近有馬のミット打ちは梅田が受けているが、ミットに対する有馬の反応は早い。

 相手にパンチを打たせて返し技をする形式練習も、有馬は確実に相手のパンチを見ながら防いでいた。

 今日のスパーリングでも、大崎の左フックを練習通りの避け方で空振りさせている。



 二ラウンド目開始のブザーが鳴った。

 スパーリングが始まると、梅田は歩きながらその様子を見始めた。

 有馬と大崎は位置を変えながら攻防しているが、その度に、リングの外で梅田は大崎の背後に場所をずらした。

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