臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「その癖は高田もですよ」
二人の先生が後ろを振り向くと、そこには森谷が立っていた。彼は、次のラウンドから康平とスパーリングなので、保護具を身に付けていた。
飯島が言った。
「そう言えば、高田も打ち終わりにお前のパンチを貰ってたな」
「えぇ、高田はストレートに関してですが、目をつぶって打ってますね。……今日はフック系もどうか俺も見てみます」
「それじゃあ、近付かなければならないんだが大丈夫か? 高田は何気にパンチがあるぞ」
「大丈夫ですよ! 俺は高田より十キロ近く重いですからね」
ラウンド終了のブザーを聞いた森谷は、そう言ってリングへ入っていった。康平も続いて入る。
森谷はウェルター級(六十九キロ以下)の選手で、身長は百七十八センチと、その階級にしては高い方だ。減量無しでは七十一キロあり、身長が百七十二センチで体重が六十二キロの康平より一回り大きい。
スパーリングが始まった。