臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 白鳥が自分の左膝を見ながら構え直す。


 スパーリングが再開された。

 最初の方こそ膝を曲げて戦う白鳥だったが、しばらくすると膝が伸び気味になっていった。


 一ラウンド目終了のブザーが鳴った。


「大崎、接近戦になっても位置を変えろ。さんざんミットで練習しただろ? それと、ボディーへ打つ割合をもっと増やせ」

 赤コーナー側で立ったまま休んでいる大崎へ、飯島が言った。


「白鳥のボディーに結構入ってるんですが、奴は大丈夫なんですか?」

 大崎は、青コーナーで立っている白鳥をチラッと見た。


「ボディーだったら倒しても構わないからな。それと、今週から石山もスパーしに来るから、接近戦で位置を変える事を今のうちに徹底するんだ」


 飯島から石山の話を聞いた大崎は、姿勢を低くして構え、位置を変える動作を繰り返した。

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