臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 特に違っているのは右膝の使い方である。

 左ストレートは、右膝を内側へ少し曲げた状態で固定させ、左足から腰、そして肩を捻ってパンチを打つ。そのおかげでパンチがブレず、打った後も綺麗に戻り易くなる。

 一方の左ボディーブローは、右膝を柔らかくしてパンチを放つ。そして、打ちながら上半身を前方へ移動させる。

 主に体の捻りを使ってパンチを放つ左ストレートに対して、左ボディーブローは前に行く力でパンチの威力を出す。


 左ボディーブローを放とうとした健太が、上半身を前へ移動させている時、彼の顔面が急に上向きになった。

 森谷の放った左ショートフックのカウンターが、健太の顔面にヒットしたのだ。

 フックは横殴りのパンチであるが、この時森谷の放った左フックは、近距離で打った為、前へ突き出すようなパンチになっていた。


 ストンと腰からマットに落ちた健太に、カウントが数えられる。

 尻餅を突いた健太は、テンカウントになっても座ったままだった。

< 187 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop