臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「はい。特に六対四(前六後ろ四)のバランスとパンチを打つ軸は、耳にタコが出来る程言われました」

 答えた健太に飯島が笑いながら言った。

「アホ! お前達はまだ不完全だからこれからも言われるんだよ。……それはともかくだ。フォームには注文してきたが、パンチの質については今まで何も言ってなかった訳だ」

「これからは、それを変えていくんですか?」白鳥が訊いた。

「そうだ。今のままだと、お前達のパンチはまだドスンパンチの状態だ」

「ドスンパンチ……ですか?」有馬が訊く。


「要は押すパンチって事さ。こういうパンチは、打ってる方からすれば強く打ったつもりでも、貰った方は案外効いていない場合が多いんだよ。特に顔面だがな」

「押すパンチだと、脳震盪が起こりにくいんですね」

「今有馬が言った通りで、押すパンチだと相手は脳震盪を起こしにくい。……そこでだ、これから効くパンチの打ち方を教えるんだが、ところでお前達、『達磨落とし』って知ってるか?」

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