臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 康平が下を見ると、水がかかった部分は目立っていた。


「康平、洋式に入って乾かしてろよ。……俺も付き合うからさ」


 康平が洋式トイレに入って、ズボンを擦りながら乾かす。

 そのうちに授業開始のチャイムが鳴った。


「康平、そろそろ乾いたか?」

「ヤバイな。乾くまでもう少しかかりそうだよ」


 個室の前で康平に訊いた有馬だったが、トイレに体育教師が入った。

 その教師は強面で、左腕に「巡回中」の腕章を付けていた。どうやら、生活指導で見廻りをしているようである。


「お前何やってんだ? もう授業は始まってんだぞ」

「あ、いや、ちょっと……」


 体育教師に詰問された有馬は、康平の事を言おうか迷っていた。

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