臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「……それで高田のズボンが乾くまでココにいた訳か?」

「はい、そうです」

 梅田に訊かれて答えた康平だったが、彼のズボンはまだうっすらと濡れている。


 梅田が言った。

「篠田先生、こいつらは私が教えた訓練をやってたようです。……有馬と高田は俺と部室に来い」


 三人は、体育教師と別れてボクシング部の部室に入った。


 梅田は、部室の奥から洗面器とエプロンを出して言った。

「この洗面器に水を入れてきて、エプロンを付けてやれば大丈夫だろ?」

「これなら大丈夫です。明日から取り組んでみます」

 そう有馬が言うと、康平が質問した。

「先生、授業が始まって十五分位経ってるんですが、どうしたらいいですか?」


「そういうのはテメェで考えるんだよ。ボクシングは機転を利かさないと勝てないんだからな」

 梅田に続いて有馬が口を開く。

「そうそう、こういう時は腹を下した事にすりゃいいんだよ。結構使えるからさ」

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