臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

「有馬、お前はそうやってよくサボってるんだな?」

 梅田が有馬を睨んだ。


「い、いや、たまたま授業へ遅れた時に言っただけですよ」

「たまたま? 現国の先生から訊かれたんだよ! 『有馬君は、ショッチュウお腹を下して授業に遅れるんですが、ボクシングをやっていけるんですかね』ってな」


 有馬は、何も言えずに下を向いている。

 部室を出ながら梅田が言った。


「お前らはサッサと授業に戻れ。……サボった時の言い訳とボクシングは、ワンパターンじゃ駄目なんだよ」


 教室へ戻りながら康平が有馬に訊いた。

「先生は最後、冗談を言ったんかな?」

「真顔で言ってたから分かんねぇよ。……俺んトコの授業は現国だから、腹を下した以外の理由にしねぇとな」



 六時間目の授業が終わって部活になった。

< 201 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop