臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「ひ、一人でコレをやる時って、あ、あっちは向きにくいんだよ」

 恥ずかしがり屋の白鳥がドモリながら言うと、女子に奥手の康平も何気に納得した。


 しばらくして、康平と白鳥の間に大きくバウンドするバスケットボールが落下した。


「あんた達、危ないからコッチ見て練習しなさい!」

 女子バスケ部顧問の田嶋に言われた二人は、コートの方に向き直して空気椅子を始めた。



 二分程経つと康平は限界を感じ、隣の白鳥をチラッと見るとまだ続けている。

 無表情に近い白鳥だが、元々赤い顔が更に赤くなっていた。顔面から汗が滴り落ちていて、彼も限界になっているようである。

 だが、白鳥に終わる気配は無い。

 彼の後から空気椅子を始めた康平は、先に終わるのが気まずくなり、太股に苦痛を感じながらそれを続けた。

 今までなら二人揃って空気椅子を始め、限界が近付くとお互い示し合わせたように終わらせていたのだが、今回は二人共限界になりながらも続けている。


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