臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 鏡の前へ並んだ康平達に飯島が言った。

「鏡の前で構えてみろ。腕の力を抜けるだけ抜け。そして手を開いたまま左右のストレートを打つんだ」


 四人の一年生達は、それぞれパンチを打ち始める。それを見て飯島がアドバイスをした。

「お前らもっと力を抜くんだ。威力の事は一切考えるんじゃないぞ。……自分の手を放り出すような感じでパンチを出してみろ」


 パンチを出し続ける一年生達に、再び飯島が言った。

「手の重み感じるまで力を抜くんだぞ」


 二ラウンド続けた時、四人は何とかコツを掴んだようである。


 ラウンド終了のブザーが鳴った後、健太が飯島に質問した。

「先生。手を放り出す感覚は分かったんですが、こんなパンチで効くんですか」

「いや、効かないだろうな」

 四人は意外な表情になった。

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