臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 練習が終わって、康平と白鳥は駅に向かって歩いていた。二人共電車通学である。

 白鳥が口を開く。

「み、右アッパーは、康平も一緒に習うと思ってたんだけどな」

「俺も思ったけどさ、……まずは目をつぶる癖を直さないとな」

「そ、その癖はあっても、康平はスパーリングでもパンチのフォームが綺麗なんだよな」

「そ、そうかな」

「そうだよ。お、俺のパンチは汚いけど、こ、康平のパンチはスパーリングを見る度綺麗だって思ってるよ」

「……そんな事ないとは思うけどな」


 そう答えた康平だったが、白鳥のスパーリングを見た時、左ジャブ以外のパンチはストレートとフックの中間のようなパンチが多いと思っていた。


「こ、康平は優しいから口に出さないけど、自分でも分かってるんだ。スパーリングをしている時のパンチは汚いってね。……だ、だから新しいパンチを康平だけが先に習う事はあっても、お、俺だけが先に習う事はないって思ってたんだよ」


 普段は口数が少ない白鳥だったが、ドモリながらもいつになく話すので康平は意外に思った。

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