臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「そうだな。まず目をつぶる癖を直さないとな」

 康平がそう言った時、五時間目の始まるチャイムが鳴り、二人は急いで教室へ戻っていった。



 放課後、日直だった康平が普段より遅れて練習場に入ると、三年生も練習に加わっていた。

 三年生は石山と兵藤、そして清水の三人である。

 彼らは二年生達と共に、各々リング上や鏡の前で、ユックリとシャドーボクシングを行っていた。


 飯島が康平に言った。

「高田、今日の一年生達は見学だ。お前らは、先輩達のスパーリングを見る時があまり無かったからな。そこの長椅子へ並んで座ってろ」


 康平は他の三人と一緒に長椅子へ座った。


 一年生達が先輩達の練習をじっくりと見るのは、練習初日以来二度目である。

 その後一年生達は、場所を変えて第二体育館での練習になったり、先輩達と練習時間をずらしたりした為、なかなか先輩達の練習を見る事が出来ずにいた。

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