臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 先輩達を見ると、全員が緊張した面持ちでシャドーボクシングを行っている。


 飯島が一年生達に言った。

「今日はガチスパーだからな。見応えあるぞ」

「ガチスパーって何ですか?」有馬が訊く。

「本気のスパーリングって事さ。倒されるかも知んねえから、みんな気合いが入ってんだよ」



「お前らスパーリング前のシャドーは四つ(四ラウンド)でいいか?」

「先生、俺はブランクがあるんで、せめて八つはさせて下さいよ」

 梅田が確認すると清水が答えた。


「そうだな。ところでお前、インターハイ予選の時に骨折した右拳は大丈夫なんだろうな?」

「ええ、ほぼ完治してるんで、後輩を可愛がる程度のパンチは出せますよ」


 清水がそう言った時、石山と兵藤はクスリと笑った。

 二年生達は誰も笑わずに、黙ってシャドーボクシングに取り組んでいる。

 どうやら二年生達の方が緊張しているようである。

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