臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 先輩達がシャドーボクシングを始めたばかりだったので、スパーリングを始めるのはかなり後になる。


「飯島先生、スパーリングまで俺もシャドーをしたいんですがいいですか?」

 有馬が訊くと、飯島はシャドーボクシングをしている二・三年生をチラッと見た。


「……いや、今日は最初から最後まで見学するんだ。スパーリングを見るだけが参考になる訳じゃないからな」

「……分かりました」


 渋々返事をした有馬だったが、先輩達のシャドーボクシングを見た時、興味深げな表情になっていた。

 それぞれが、全く違った動きをしていたからだ。

 他の一年生達もそれに気付いているようで、先輩達の動きをジッと見ている。


 前キャプテンの石山は、オーソドックススタイル(右構え)であるが、左フックと左アッパーが恐ろしく強い。

 彼は最初のラウンド、左のフックとアッパーだけのパンチをずっと繰り返している。かなりユックリと打っているので、フォーム確認のようである。

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