臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「先生! それじゃあ、この練習は意味無いんじゃないですか?」
言い返した有馬に飯島が答える。
「話は最後まで聞けよ。効かないのは、あくまで素手で打った場合だ」
再び有馬が訊いた。
「グローブを付けると変わるんですか?」
「グローブはある程度重いだろ。その重みで威力が出るんだよ」
今度は康平が疑問をぶつけた。
「アマチュアのグローブは柔らかいですよね。逆に威力が無くなりそうな気がするんですけど……」
「確かにアマチュアのグローブは柔らかいから痛みだけは半減する。……だが痛いイコール効くパンチじゃない事は分かってるよな」
「……はい。脳震盪ですよね」
「……まぁそれだけじゃないんだが、そう思っててもいいだろう。ところでだ……口で説明するのも限界があるからお前らグローブを付けろ」
飯島はそう言って、自身もミットのある場所へ歩いていく。