臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 次のラウンドからはリングへ入り、位置を変えながら、拳を握らずに軽くパンチを打っていた。


 他の先輩達も、各々違ったシャドーボクシングでラウンドを消化していく。


 飯島は、一年生達が座っている長椅子の隣に立っていた。彼は一年生達に質問した。

「お前ら、二・三年のシャドーを見て気にならないか?」

「お、大崎先輩のシャドーは、パンチが凄く小さいんですよね。あ、あれじゃ、相手に届かないと思うんですが……」

「そうだな白鳥。でもお前は、大崎のパンチをかなり貰ったから不思議に思うだろ?」

「は、はい」

「あいつが今やってるシャドーボクシングは、相手をイメージして動いてるんだよ。シャドーボクシングをする本来の目的はソレなんだ。……まあ大崎の場合は、イメージしながらシャドーをする時だと、あんな感じで小さく打ってしまうんだがな」


「他の先輩達も、パンチをユックリ打ったり軽く打ったりしてるのは、イメージしながらシャドーをしてるって事なんですか?」

 白鳥の隣に座っている有馬が質問した。


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