臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「それだけじゃないんだが……。ただ今までのお前達のシャドーは、習ったパンチや技を反復するだけだったんだよ」


 黙って聞いている一年生達を見て、飯島は付け加えた。

「何もお前達のやってきたシャドーボクシングが間違ってた訳じゃないんだよ。習ったものの反復練習は大事だし、お前達は身体で覚えなきゃならない事が多かったからな」


 頷く一年生達に飯島が続けて話す。

「最近お前達はスパーリングをするようになったろ? 今更ながら言うが、ボクシングは相手がいて初めて出来る競技なんだからな。シャドーボクシングやサンドバッグ打ちの時は、少しでもいいから相手をイメージして練習して欲しいんだよ」

「でも相手をイメージするって言っても、そんなにハッキリとイメージ出来るもんなんですか?」


 有馬がそう訊いた時、飯島はニヤリとして答えた。

「それはこれからの訓練次第さ。例えばシャドーをする時なんかに、誰かと向かい合って行えばイメージし易くなるしな」
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