臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 保護具をさっと片付けた大崎は、マウスピースを口に嵌めたままグローブを付け、すぐにサンドバッグを打ち出した。

 スパーリングを終えたばかりで呼吸が荒い状態だったが、パンチの数はかなり多い。

 大崎の足元には、汗がポトポトと落ちていく。


「大崎、追い込みをかける時も雑になるんじゃないぞ。横への動きをもっと加えるんだ」

 飯島に言われた大崎は、自らへ気合いを入れるように大声で返事をした。


 一方の石山は、一年生達の傍へいる飯島の近くにいた。

 引退した彼は、練習を続ける気が無いようで、バンテージを外しながらスパーリングを見ている。


 大崎のサンドバッグ打ちを見て康平が言った。

「飯島先生、先輩はスパーリングが終わったばかりなのに、サンドバッグ打ちは激しいんですね」

「高田、スパーリングって疲れるだろ?」

「はい、グローブも重いですからね」

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