臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「相手がパンチを打ってくるプレッシャーもあるからな。激しいスパーリングの後ってのは息が上がり易いんだが、その疲れた時にサンドバッグをガンガン打てばスタミナも付くって訳さ」


 飯島が言い終わると、続いて有馬が質問をした。

「ところで先生、スパーの時に大崎先輩へ『二度攻め』って言ってましたけど、それは何ですか?」

「言葉通り二度攻めるって事なんだが、ただ単純に二回攻めるんじゃないぞ。一度コンビネーションを打った後、すぐにもう一回コンビネーションを打つんだよ」

「それだけで効果あるんですか?」

「最初のコンビネーションを打った時、打ち合いになってれば効果的面だぞ。相手のパンチは誰でも怖いからな。一度打ち合った直後ってのは、一瞬ホッとして気を抜く奴が多いんだ。その時に二度目の攻撃をするとヒットし易くなるんだよ」

「……簡単では無さそうですね」

「まぁな。大崎のように、打たれてもへこたれないガッツと手数が必要なんだ。お前達はスパーリングでも気を抜く時が多いから、まだまだなんだがな」

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