臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「清水の奴、スパーを楽しみにしてた割に苦戦してますね」

 スパーリングを見ていた石山がそう言うと、一年生達と飯島の視線はリング上へと移った。


 清水は、選手時代ライト級(六十キロ以下)で戦っていたが、身長は百七十五センチと高い方である。

 右ガードを口のやや右側に置き、左ガードは肩の高さで少し前にあった。

 前足をベタ足にして、後ろ足は踵をグッと上げている。

 学校の中での清水はガラが悪く、ガニ股にして肩で風を切るように歩くのだが、この時の両足全体はやや内股である。

 リズムは取らず、時折クイッと頭の位置を小さく変えて相手の隙を伺っている。


 向かい合っている相沢は同じライト級なのだが、身長が百七十センチと清水よりやや低い。

 両腕のガードの幅を狭くしてピタッと体に付け、左右のグローブは口の前にあった。

 大崎のように膝でリズムを取るが、彼程早いリズムではなく、ユッタリとした間隔で頭が上下にブレる。


 相沢が仕掛けた。

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