臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
 三ラウンド目が終わり、相沢は大崎の隣ですぐにサンドバッグを叩き始める。


 梅田が相沢に言った。

「相沢、お前は頭を振るのと攻撃を連動させないから手数が少ないんだ。二ラウンド以降は清水のペースだったんだからな」


「ウヒャ〜、現役は大変だね」

 激しくサンドバッグを叩く後輩達を尻目に、清水はタオルで汗を拭きながら一年生達が座っている長椅子の方へ歩いていく。


「お前、ジャブ以外は当たらなかったな」

「何言ってんですか? 左ボディーも当たりましたよ。……一発だけでしたけど」

 からかう口調の飯島に清水が言い返した。

 石山も話に加わった。

「清水は今日のスパーを一番楽しみにしてたんだよな?」

「当然じゃねぇか! 何たってココは、人をぶん殴って褒められる場所だからな」

 清水がシカメッ面で話すと、飯島と石山、そして四人の一年生達は小さく吹き出した。

< 237 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop