臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
二ラウンド目になっても、二人は、一ラウンド目と同様に、お互いのパンチが届くか届かないかの間合いでパンチの交換を行っている。
この間合いは中間距離(ミドルレンジ)で、強いパンチが打ち易い。その為、二ラウンド目も緊張感があった。
だが、カウンターを狙う森谷と、パンチを打った後すぐに頭の位置を変える兵藤は、共にクリーンヒットが少ない。
石山が言った。
「引退したのに兵藤もよくやるよ。森谷にパンチが無いと言っても、ずっと中間距離でやってんだからな」
「え? 森谷先輩ってパンチが無いんですか?」
思わず康平が訊いた。
「……俺の言い方が悪かったな。ウェルター級(六十九キロ以下)じゃ、そんなにある方じゃないっていう意味だったんだよ」
言い直す石山に続いて、飯島が付け加えた。
「森谷はかなり膝を柔らかくして戦ってるだろ? 膝を柔らかくするのは大事なんだが、柔らか過ぎるとパンチを打つ時に力が逃げるんだよ」
「本人は知ってるんですか?」
この間合いは中間距離(ミドルレンジ)で、強いパンチが打ち易い。その為、二ラウンド目も緊張感があった。
だが、カウンターを狙う森谷と、パンチを打った後すぐに頭の位置を変える兵藤は、共にクリーンヒットが少ない。
石山が言った。
「引退したのに兵藤もよくやるよ。森谷にパンチが無いと言っても、ずっと中間距離でやってんだからな」
「え? 森谷先輩ってパンチが無いんですか?」
思わず康平が訊いた。
「……俺の言い方が悪かったな。ウェルター級(六十九キロ以下)じゃ、そんなにある方じゃないっていう意味だったんだよ」
言い直す石山に続いて、飯島が付け加えた。
「森谷はかなり膝を柔らかくして戦ってるだろ? 膝を柔らかくするのは大事なんだが、柔らか過ぎるとパンチを打つ時に力が逃げるんだよ」
「本人は知ってるんですか?」