臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)
「おっ、いい感じだ! 高田、お前この感覚分かるか?」

「……あまり上手く言えないんですが、パチンと弾くような感じですか?」

「まぁそんな感じだ。忘れないようにもう一度やるぞ!」


 康平は、飯島に言われて再びワンツーストレートを繰り出す。


 バスバスッ! 

 湿気たミットの音が鳴り、飯島が言った。

「力むんじゃないぞ。もっと楽な気持ちで拳を投げるんだ!」


 康平がもう一度ワンツーストレートを放つ。飯島が言った事を意識したのもあってか、今度は乾いた音がミットから出た。


 飯島が全員に話す。

「高田は手こずったが、これはいい加減な気持ちでグローブを放り投げると上手くいくからな。次は片桐の番だ」


 健太が飯島の前に出てワンツーストレートを打つ。彼はサウスポーなので、右ジャブから左ストレートのコンビネーションである。

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