臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

「ストーップ! 大崎、こっちへ来い」

 飯島が赤コーナーの所へ行き、大崎に指示を出す。


「……何とかやってみます」

 そう答えた大崎は、リング中央へ行って有馬とグローブを合わせる。


「よーし、今から始めるぞ」

 飯島はタイマーをリセットした。


 有馬はユックリと左へ回りながら左ジャブを放つ。大崎の右クロスカウンターを警戒してか、踏み込みが浅く探るようなパンチだ。

 大崎は、左下へ頭をずらしながら右オーバーハンドで飛び込んでいく。

 有馬の踏み込みも浅かったせいか、大崎のパンチは届かず空を切った。


「いいぞ大崎。……ただ、相手が右を打ってもカウンターになるように、頭のずらしはもっと大きくだ」

 頷く大崎に、飯島は更に付け加える。

「俺がいいと言うまで、ドンドン合わせろよ」


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